被害者の後遺症を治療するには?
DV被害にあって、逃げることができた方は、最初は皆さんほっとしたり、喜んだりしています。
でも少しして、その感激が薄れてきて、何だか涙が出てきたりします。
ふとしたことで、フラッシュバックしたり、悲しくなったり。
今まで夫に従い、人づきあいもしていませんから、相談できる人が身近にいません。
DV被害者の多くは、やっと逃げて自由の身になったとしても、動き出すことができません。
知ってのとおり、DV被害者は、夫に洗脳されています。
被害者が自分の時間を満喫することができるようになるためには、その洗脳を解かなければなりません。
洗脳を解くまで、とても時間がかかる人もいます。
被害者の心の中には、DV被害者の心理でお伝えした5項目、他にもそれぞれ特有の心理が複雑にからんでいます。
縄のように、ぐるぐるにからんでいますから、解くのはとても難しいです。
夫の洗脳を解くには、段階を踏んで、同じような道をたどります。
ことが必要です。
このページでは、洗脳を解くのに必要なこと、そしてそれからのことをお話ししていきます。
DV被害者は、依存体質になってしまってます。
なので最終的には、
「依存せずにひとりで生きていくことができる自分になる。」
ことが目標です。
最初は誰かのサポートがいると思いますが、だんだん自立していくような流れが作れるといいですね。
誰かのサポートとは、カウンセラー・医師・DV専門NPO法人・両親や親戚・お友達などです。
シェルターに逃げた場合は、嘱託医などもいますし、相談すると、カウンセリングの道をつけてくれたりします。
被害者のケアについては、NPO法人など、多くの機関で行われていますから、ネットで調べれば、すぐお近くの機関が出ていると思います。
ちょっと前段が長くなりましたが、ひとつづつ説明していきたいと思います。
①自分が洗脳されていたことに気づく。
DV被害者は、逃げてすぐの時、興奮していますし、混乱しています。
配偶者暴力相談支援センター(婦人相談所)に一時保護された場合は、期間が短いので、被害者は興奮・混乱状態のまま、次の生活のことを決めていかなければなりません。
その後、実家やシェアハウスなど、誰かがいるところに行くことができれば問題ないです。
ですが、身寄りがなかったり、実家の方からすぐには難しいと言われることがあります。
その時はひとりまたは子どもとマンション・アパートなどで生活することが多いです。
被害者の頭の中には、DV夫の考え方が染みついています。
それは生活全般にわたっていますから、いちいち頭をもたげてきます。
例えば、
・夫の好みの献立を無意識に作ってしまう。
・何でも夫に聞く癖があり、ひとりで決められない。
・大人しい女性が素晴らしいと思うので、言いたいことがあっても言わない。
・男性をほめることばかり考える。
・世間の人が信用できず、人と接するのが怖い。
・自分には何の取り柄もないので、人から好かれないと思う。
・暴力をふるわれないので、「自分は清純だ。」というプライドが保てない。(詳しくはこちら)
など、数え上げたらきりがありません。
逃げたばかりの被害者の方は、何もかも、自分で決めることができません。
細かいことから何から何までわかりません。
それこそ、箸のおき方や、みそ汁をいつ飲んでいいかまで、夫の顔色をうかがってきました。
夫にコントロールされてきたので、自分の意思を無くしてしまっているんです。
こんな状態では、本当は生活もままならないのですが、本人は気づきません。
今までの、暴力のある日常から、なかなか頭が離れていきません。
また被害者がどんな気持ちでいるのか、周りからはわかりづらいです。
暴力現場のフラッシュバックは、最初何ケ月かは、何かの拍子にあるかもしれません。
ですが比較的、時間が経てば薄れてきます。
それは、自分でもつらいことだし、考えが間違っていると解るからです。
自分の防衛本能が働いて、治すような方向に行きます。
(あまりにも治らない方は、医師やDVのNPO法人などに相談してみてください。)
でも、夫の洗脳の方は、普通に生活できているように見えるので厄介です。
その時々で、誰かに間違いを指摘してもらわないと、被害者は解りません。
それも、被害者がDV被害を受けていたことを知っている人でないといけません。
知らない人だと、被害者は「ただの大人しい人」で終わってしまいます。
NPOなど、被害者の方の集会で話を聞くと、みなさん同じような経験があるので、とても参考になります。
自分がどんな状態かを知ることは、幸せへの第一歩です。
そして、「自分はひとりぼっちではない。」ことがわかりますから、恥ずかしがらず、行ってみることをおすすめします。
②自分が何を考えているか、全部出す。
全部出すことは、とても大切です。
出すことはストレス解消にもつながりますから、ぜひおすすめします。
恥ずかしながら、私も立ち直りたいでお話ししたように、自分が何を考えているか、全部書き出しました。
あの経験がなければ、自分を客観的に見れませんでしたから、とても重要なことだと思っています。
思っていることをずっと書き出していくのが、後で見直すのに一番簡単かな?と思います。
自分の頭に浮かんだことを、ひたすら書き出していきます。
文章が上手でなくても、あまり意味が解らなくてもいいです。
DVに関係なくてもいいです。
字が汚くてもいいです。
そして、恥ずかしがらなくていいです。
もう夫はいないのですから。
でもどうしても書くのが得意でない人は、違う方法でもいいでしょう。
やり方はいろいろあると思います。
ボイスレコーダーとかで、しゃべって録音するとか。
図や表、絵にあらわしてみるとか。
相手がいれば、聞いてもらうとか。
そして、自分の考えていることを、格好つけずに全部出します。
この時、出し渋ってしまうと、うまく結果に結びつきません。
自分の中に秘めているものを、全部出さないと、自分がどんな人間かわかりません。
後で、自分の人生設計をするためなので、元のたたき台がウソだと、何の意味もありませんので、気を付けてくださいね。
書きだして最初のほうは、怒りや混乱の感情が出まくるので、大変です。
でも、その感情をセーブしようとせず、思いのまま書いていくといいです。
ずっと書いていると、頭の中が少しずつスッキリしていくと思います。
慣れてくると、出すことが癒しになってきます。
③それを誰かに見せたりして、自分を客観的に判断する。
そして、上の
どなたか、思ったままを言ってくださる方がいれば見せたいところですが、無理な場合は自分でかまいません。
ここで重要なのは、自分を客観的に見ることなので、他人が書いたもののように考えてみることです。
なので、何を書いたか忘れたころに見てみるのもいいと思います。
ずっと書いて溜めていって、前に書いたものから見ていくのがいいかもしれません。
「これを書いた人はどんな人なのかな?」という気持ちで、観察します。
いろいろな言葉から、この人がどんな人なのか、書いていきます。
箇条書きで書いていくのがいいでしょう。
自分に都合の良いことも悪いことも全部です。
他人を見るように、冷静に、客観的に自分を見ていきます。
自分がどんな人なのか解ったら、親などに見せるのがいいです。
でも、関係がよくなかったりするときは、支援してくれる人でもいいし、お友達とかでもいいです。
要は、世の中の常識を教えてくれる人がいいです。
自分が常識と、どれだけ離れてしまっているのか、意見をもらいましょう。
DV夫の考え方に支配されているうちは、何をしても失敗します。
夫に依存し、夫の奴隷になるように作られた考え方です。
それを完全に捨てる必要があるので、自分の考え方と、常識を比較するのはとても重要になってきます。
この時期に気を付けてほしいことは、素直になることです。
他人に言われることが夫に教えられたことと違うので、反発してしまいがちです。
全員が正解を言っているわけではないですが、今のところは聞いておきましょう。
情報を多く取り入れることが必要です。
④自分がこれからどうしていきたいか、作戦を練る。
自分が捨てるべきな考え方がわかったら、今度は自分がどんな人生を送っていきたいかを考えていきます。
なにごとも目標がないと、前向きには進めません。
やっと自由になれたのに、DV夫の考え方に支配されたままでは進むことができません。
最初は、できようができまいが、自分のしたいことをどんどん書き出していきます。
それだけで、ちょっと楽しい気分になってきます。
将来を夢見て、ニヤニヤする時間はとても大切です。
本当にそんなことでいいのか疑ってしまうと思いますが、それでいいです。
今までマイナス思考のほうが都合がよかったので、慣れていないだけです。
DV夫は、ことさらに妻をおどして怖がらせます。
世間は怖いところだと教え、妻が外の世界に出ていくのを妨害します。
本当に怖いのは、世間ではなく、夫のほうです。
最初は楽しいことを考えると、すぐに空しい気分になったり、夫の顔が思い出されたりして不安になるかもしれません。
それをかき消して、楽しい気分に浸りましょう。
・今までやりたかったのに、できなかったこと。
・結婚前はやっていたのに夫にやめさせられたこと。
・自分が穏やかで楽しい生活を送っている姿。
何でもいいですから考えて、自分をマイナス思考から、解き放ちましょう。
夫から離れてしばらくするとわかってくると思いますが、世間はそんなに怖くないです。
批判したり、怒ったりする人はほとんどいません。
もしまれに、批判されたり怒られたりしたら、その人とは付き合わなければいいんです。
付き合う人も、自由に選ぶことができますから。
将来の自分にニヤニヤできるようになったら、人生の作戦を立てていきます。
作戦を立てるといっても、難しく考えなくていいです。
できることから始めていくようにします。
アドバイスとしては、自分の好きな選択肢を選ぶようにするといいです。
生活の中の、ちっちゃいことから始めます。
例えば、今日の晩ごはんの候補も、「体に良いから」ではなく、「好きだから」で選ぶようにします。
夫ならこれを選ぶだろうではなく、自分の好きにするんです。
夫によって無くされた自分を取り戻していく作業です。
好きな方を選んでいくと、時々「自分ってこんな人だったっけ?」と思うようなことがあります。
意外な自分を見つけることができたりして、とても面白いです。
自分の好きなパターンがわかってきたら、やりたいことをどうやっていくか考えます。
・お金がかかることであれば、収入を増やさないといけないとか。
・趣味のサークルなど、勇気を出して参加してみるとか。
・何か問題があるなら、どうしたらできるか。
など、自分を第一に考えていってくださいね。
⑤少しずつ実験してみて、成功体験を重ねていく。
暴力はエスカレートするにも書いていますが、自分に自信がないうちは、人づきあいがとても難しいです。
「自分の相手をしてくれる人はこの人しかいない!」と思いこんで、その人に依存してしまうことがあります。
「何の取り柄もない私なんて、嫌われるだけ。」
「私なんて誰も相手にしてくれない。」
などと思っていると、話し相手が現れたとき、異常に執着してしまいます。
本人的には、やっと見つけた話し相手を、失う恐怖でいっぱいになります。
夫といた頃と同じように、相手に気を使います。
自分の行動を相手に決めてほしいので、つねに話したいです。
依存してしまって、メールやラインなどを送りまくり、ストーカーのようになってしまいます。
それでは嫌われてしまいますよね。
そこを被害者は、嫌われたと気づかないことがあります。
もし気づいても、誤解をしてしまいます。
本当はしつこくて嫌われたのに、違う理由だと思い込んでしまいます。
何も取り柄がないからとか、夫が前に言っていたようなことを理由にします。
DV夫は、何か華々しいことを求めて、チヤホヤされるのを美徳としています。
なので、いつも周りの人に「すごい!」と思われるようなことをしたいです。
ですから、「取り柄」とか「才能」という言葉に弱いです。
被害者のほうも、どっぷりその価値観でいるため、そんな理由しか見つからないんです。
楽しい人生を送るためには、人間関係を上手に保っていく必要があります。
夫の教えは、妻の人間関係を妨害する教えばかりです。
その教えを捨てるためには、「自分の自信を取り戻すこと。」が必要です。
むずかしく言うと、「自己肯定感を上げる。」ということになりますが、その名のとおり、自分を肯定する感覚を上げていくことです。
自分に「取り柄」や「才能」がなくても、「自分はそれでいい。」という感覚です。
「自己肯定感」を上げると、「自分は自分でいい。」と思えるようになります。
そうすると、自分で何でも決められるようになります。
もう誰かに何でも決めてもらわなくていいので、いちいち他人の意見を聞かなくてもいいです。
自分のことは自分で決めますから、結果が気に入らなければ、またやり直せばいいのです。
もう誰にもバカにされたりしません。
バカにする人とは、付き合わなければいいんです。
孤独なのではなく、自立です。
自分を認めると、他人のことも認められるようになります。
他人をバカにしなくなります。
そうすれば、人間関係もだんだん良好になってくるでしょう。
で、ですね、
「自己肯定感」を上げる、一番の方法とは、
「小さい成功体験を重ねること。」と心理学では言われています。
私が今まで逃がして、治療してきた人たちも、皆さん自分を認める作業をしています。
絶対に小さいことから始めてください。
いきなり大きいことをやろうとするのは、DV夫的な考え方です。
始めは自分のことを、何でもできたら褒めましょう。
・服を1つ片づけたとき。
・1食、食事を作れたとき。
・子どもを1日、叱らないでいられたとき。
・好きなものを選べたとき。
・誰かを褒めることができたとき。
こんな風に、小さいことができたとき、自分を1日に何回も褒めてあげましょう。
慣れてくると、自分を大切に扱うことができます。
自分を大切にできれば、他人のことも冷静に判断できて、大切にすることができます。
※ただひとつ、自分を褒める時にやらないでほしいことがあります。
それは、「他人と比べて、勝っているから褒めること。」です。
DV夫の考えに支配されているうちは、やってしまいがちです。
くれぐれも注意してください。
治る過程で気をつけてほしいこと
どの機関を選んでも問題ないですが、ひとつ、忘れないでほしいことがあります。
それは、DV被害者の一番の問題は、「依存体質であること」です。
被害者の中には、誰かに依存することから離れられず、つらい思いをする人が何人もおられます。
医師やカウンセラーに依存して、治らない人がいるんです。
医師やカウンセラーが何とかしてくれるだろうと思い、自分の「依存体質」に気づきません。
自分で決められないので、決めてもらおうとします。
何とかしてもらいたくて、何回か通うのですが、何もしてくれないと思ってしまいます。
「医師は薬の量を決めるだけ(で、自分の人生をなんとかしてくれない)。」
「カウンセラーは、話をただ聞くだけ(で、自分の人生をなんとかしてくれない)。」
と、医師やカウンセラーのせいにします。
そして、すぐ治療をやめてしまうので、病院や施設を転々とするようになります。
いつまで経っても治らないと、グチばかりこぼすようになります。
逆に、クレーマーになってしまう人もいます。
医師やカウンセラーは、心の相談には応じますが、被害者の人生をなんとかしてくれるわけではありません。
「依存体質」は、自分で気づき、自分で改善していくしかありません。
自分の人生は自分で作っていかなければなりません。
もう好きにしていいのですから、上の①~⑤をよく読んで、ゆっくり自立していってください。
つらいときは泣いてもいいですし、叫んでもいいですよ。
いや、叫ぶのはちょっと・・・かも。
次のDVでの共依存では、共依存について詳しくお伝えします。
今回も、長い長い文章を、最後までお読みいただき、ありがとうございました。