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大丈夫。自由は怖くない

被害者の特徴

このページでは、前ページの、DV被害者の心理からの続き、「DV被害者の特徴」についておおくりいたします。
相談に来てくださった方から見える心理、特徴をまとめてみますと、9つのカテゴリーに集約されていきました。

その9つは、
「DV被害者の心理」
①無気力で、考えることをやめている。
②殴られるのは自分のせいだと思っている。
③夫に依存している。
④家族、とりわけ夫を守らなければならないと思っている。
⑤「被害者はきれいで悪くない。」という感覚がある。

「DV被害者の特徴」
⑥露出の少ない服装。
⑦つきあいが悪い。
⑧グチが多い。
⑨逃げようとしない。

となりました。

例によって、全部書くと長くなるので、心理編と特徴編に分けてお伝えしていきます。
このページでは、DV被害者の多くに共通している「DV被害者の特徴」についてお話しします。

⑥露出の少ない服装。

DV相談に来られる方は、たいてい露出の少ない服装をしています。
長袖で、襟の高いものを着て、スカーフをしているときもあります。
顔はマスクにサングラスをかけ、ふちの広い帽子をかぶっています。

そんな方が窓口に現れただけで、DV相談とわかります。
DV被害者は、いつでもそんな恰好をしていますから、夏にはちょっと違和感があります。

被害者が肌の露出をさける理由は2つあります。
1つ目は、けがを隠すこと。
2つ目は、夫にそう教えられているから。
です。

1つ目のけがを隠したいのは、わかりますね。
DV夫にも、顔など、「見えるところに暴力をふるうタイプ」と、
「見えないところばかりを狙うタイプ」に分かれます。

「見えるところに暴力をふるうタイプ」は、妻のけがを他人に見せることに快感を感じています。
妻のけがは、自分のものだというしるしです。
牛や馬に付ける、「焼き印」のようなものです。
その「焼き印」があるので、妻は肌を隠すようになります。

このタイプのDV夫は、常に攻撃的な性格で、自分のことも強烈にアピールするような人です。
勢いがあって、強引に物事を決めていくような。
見ていて、暴力をふるいそうな、男性的な外見です。
DVの種類も、「身体的暴力」に比重がかたよっていることが多いです。
なので、DVも周りに見つかりやすく、通報で発覚することもあります。

反対に、「見えないところばかりを狙うタイプ」は、おなかなど、周りからは見えないところに暴力をふるいます。
陰湿で、4つの暴力を巧みに使うタイプです。

このタイプのDV夫は、わかりやすいところに暴力をふるいませんから、肌を隠す必要はありません。
でもこのタイプは、陰湿に妻を洗脳していくようなタイプです。
このタイプがほとんどですが・・・。

夫はあらゆる人間にやきもちをやき、妻を世間から遠ざけようとします。
妻が自分以外の人間としゃべるのを想像するだけで、はらわたが煮えくり返ります。
「妻はすきあらば浮気しようとしているのではないか?」
「妻が少しでも肌を見せると、男がいっぱい寄ってきて困る。」

こんなことで頭がいっぱいのDV夫が、妻の露出を許すはずがありません。
妻はいつも1人で家に居らされ、少し出る時の服装も指定されます。

夏でも何だか厚着をしている人がいたら、要注意です。

⑦つきあいが悪い。

DV夫は妻をコントロールし、「社会的隔離」します。
肌の露出もそうですが、妻が隣の人としゃべっているだけで嫉妬します。
「あいつと付き合っているのか!」
「さっきのお前の目は、あいつに惚れている目だ!」
「浮気の相談でもしていたんだろ!」

など、少しのことで他人と付き合わせないようにします。

ご近所さんならまだいいですが、隔離は妻の両親・親族・友達にまでおよびます。
「付き合うな!」と言うだけでなく、上手にもめさせようとしてきます。
コントロール好きのDV夫ですから、人間関係を操作するのはお手の物です。
妻の両親に、妻のウソの発言をふきこむくらい、日常茶飯事です。

一方、妻は、夫に言われて、夫以外の男性とあまりしゃべらなくなります。
そして両親とうまくいかなくなります。
「何かおかしいな?」と思っているうちに、友達もなくしてしまっています。
それが夫のしわざだとは気づかないうちに終わります。

夫は、家にいて家事ばかりする妻が好きですから、妻は外出を控えます。
あまり外出しないでいると、だんだん外に出るのがおっくうになってきます。
お化粧もしないので、近くの買い物でも、マスクをするようになります。
他の世界の情報をいれず、夫に洗脳されるので、妻は夫の意見のみを聞くようになってしまいます。
共依存の始まりです。
妻は夫に依存した状態で、コソコソ生きるしかありません。

やがて妻は、共依存に安心を見いだします。
夫の想いにさえ従っていればよい、簡単な世界。
あまり何も考えないでいいし、夫に守られている(という幻想の中の)安心感。
その中に長く居続けると、外に出るのが怖くなります。

人づきあいが恐怖です。
そして、以前は楽しんで行っていた会合に行けなくなり、周りは心配するようになります。

このように、DVでつきあいが悪くなる妻の心理はとても厄介です。
夫の強制でなく、自らが進んでつきあいを止めてしまうのですから。

結婚して、つきあいが悪くなっている人にも注意が必要です。

⑧グチが多い。

もうさんざん共依存のことを話してきましたが、DV渦中の夫と妻は、二人とも依存体質です。
お互いが、自分の人生を、相手に預けている状態です。
夫と妻の「依存のかたち」はちょっと違うのですが・・・。

DV夫の依存は、「妻に全部、世話してもらう。」
妻の方は、「夫に何でも決めてもらう。」です。

妻はもう自分で何も決めまられせん。
それは、自分のこともです。
自分の人生に干渉されすぎて、自分の人生のことなのに、決定をあきらめてしまっているんです。

何でも他人に決めてもらうようになると、人の意見を待つようになります。
次に自分がやることも、指示してもらわないとできません。
楽しいことも、悲しいことも、何でも人まかせです。

何でも人まかせの妻は、自分で決めていないので、自分に責任もてません。
誰のせいにしていいかわからない妻は、混乱します。
本当はDV夫のせいなんですが、夫は上手にほこ先を変えてしまいます。

自分が楽しくないのは他人のせい。
自分が充実していないのは他人のせい。
自分がDVを受けるのも他人のせい。

です。

こうして依存体質の人は何でも他人のせいにするようになり、グチが多くなります。
グチの多い女性がいたら、その人はDV被害者でなくても、必ず依存体質です。
ただの依存体質の人なら、すぐ依存してくるので近寄らないほうがいいです。

でももし、その人がDV被害者なら、助けが必要です。

⑨逃げようとしない。

このことは、誤解…被害者はなぜ逃げない?で詳しくお話ししていますが、DV被害者は、自ら逃げようとしません。

家から男性の大きい声や、女性の叫び声が聞こえ、女性は厚着。
女性はいつも疲れた表情で、ゆっくりとした行動。
話しかけてもけいかいされ、あまりしゃべってもらえない。

周りは女性がDV被害者だとわかっているのに、それをDV相談にまで結びつけるのは、そうとう難しいです。
被害者本人にその気がないのに、相談に連れていくことはできません。
むりやり相談に連れて行っても、DVのことを隠します。
もしうまくいって逃げることができたとしても、数日して帰ってしまうのがオチです。

共依存により、被害者は、もう逃げようとしません。
上の、⑦つきあいが悪い。にも書いていますが、DV夫に安心感を得てしまうと、もうそのままでいいような気になってきます。
DV夫の思想の中で、だらしなく、時が止まったような状態です。
新しいことをしようとすると足を引っ張られる、底なし沼のようなものです。

対して、私たち相談員は、相談に来られて、危険と判断すると逃がします。
相談所的には、「1人の命を救えてバンザイ!」みたいな様子です。
でも逃げる気がない被害者から見ると、私たち相談員の行動はありがたいどころか、とても迷惑に感じます。
本人は暴力をふるわれるのは当たり前で、逃げる要因になりません。
なので、せっかく逃がしたのに数日で帰ってしまうことは、意外と多いです。

本人としては、
・本当は優しい夫を、ちょっとのことで犯人扱いされ、
・プライベートなことまで詮索され、
・毎日の穏やかな生活をかき乱され、
・あげくの果てには、夫を捨てて逃げろと言われ、

るわけです。

本当は、命の危険があるし、夫は立派に犯罪者だし、全く穏やかな生活なんてしていないのですが、
夫の仕掛けた底なし沼からは、相談員は敵にさえ見えるんです。
こんな状態では、相談員が何を言っても前には進みません。

では、どうしましょうか。

DV被害者を、本人の意思で逃がすためには、「夫の洗脳を解く」必要があります。

まず最低限、
・DVは犯罪だということ。
・自分はDVを受けているということ。
・DVは妻が一緒にいては治らないこと。
・なので妻は、一旦逃げる(または別居する)必要があること。

を解っていただかないといけません。

DV夫の洗脳は、生活全般・考え方全部で行われます。
なので、その1つを注意したところで妻がすぐ変われるものではありません。
そこが難しいところですが、支援者はおせっかい扱いされながらも、被害者に真実を教えることが大切です。
夫の洗脳がきつければきついほど、解くのに時間がかかります。

被害者への誤解

前ページDV被害者の心理から、被害者が何を考えているか、どう見えるのかお伝えしました。

DV被害者は、一見するだけではDVとわからない人も多いです。

・あまり多くのことを語らない。
・夫に暴力をふるわれているのに、夫の悪口を言わない。
・おだやかで、人の話をよく聞く。
・まじめで正義感が強い。

など、DVとはかけ離れた特徴が強く出てしまうこともあります。
これもDV夫の教育のせいなのですが、上手にDVは隠されてしまうんです。

また、DVが発覚しても、相談まで、時間がかかることが多いです。
DVがわかり、周りの人は良かれと思って逃がそうとしたり、支援をしたりすると思います。
なのに当人はまったく逃げる気がなく、逆に周りの人を迷惑がったりします。
あげく、おせっかい扱いしたりしますから、支援者はあきらめてしまうことも少なくありません。
ひどい時は、夫にバレて嫌がらせされることだってあります。

そんなことが重なって、周りの人は支援をあきらめ、被害者は誤解を受けることになります。
本当は支援が必要なのに、夫の洗脳によって妻は表現できません。
妻の本音は心の奥底の、本人も気づかない所へ、しまい込まれて出てこれなくなります。

このように、DV被害者は、夫によって複雑に隔離されていますから、支援は注意が必要になります。
へたに手を出してしまうと、足元をすくわれることもあります。
なので、専門家に一度相談してみてください。
どんなことでも、本人でなくても相談できます。
その1回の相談が、未来への第一歩となります。

次の被害者の後遺症を治療では、被害者が治っていく過程についてお伝えします。
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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