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大丈夫。自由は怖くない

加害者の更生・治療の現状

DV法では、加害者を逮捕できるようになりました。
ですが更生・治療のことには全くふれていません。
DV加害者が、自分のDVを治そうとして、精神科や、心療内科に行くことはあります。
でもDVの本質は、加害者の考え方にあるので、病院での治療は基本的にむずかしいです。
(※DVの原因が精神疾患にある場合は、その治療をすることで良い方向にむかうことがあります。)

効果があるものとして言われているのは、「カウンセリング」と「DV加害者プログラム」です。
NOVOさんのリンクのページにいろいろな施設がのっていてわかりやすいです。

加害者は更生・治療できる?

保護命令制度…加害者が逮捕されたら?の最後のほうに書いていますが、日本では、加害者を強制的に更生・治療させることができません。
できないのなら、加害者本人が自発的に更生・治療する必要があります。
それは可能なんでしょうか?

DV加害者の心理…③事実を自分の都合のいいように解釈する。にもあるように、加害者はなんでも自分の都合のいいようにしか言いません。
平気でウソもペラペラしゃべります。
逮捕されたあとでさえ、自分が悪いなんて思ってもいません。

妻が暴力をふられているという事実に対して、
・妻が悪い、妻が挑発してきた。
・妻が大げさに自分のしたことを言いふらしている。
・妻が暴力をふるう。

などと、妻が全くやっていなったことさえ述べたてます。

逮捕されたあとは、
・警察は、妻の意見だけを聞き、妻のやったことを俺に聞こうともしない。
・女が言ったら全部通る、えん罪社会だ。

などと言って、逆に訴えようとする人もいるほどです。

そして、意外なことに、
・DVをするやつは最悪。
・DV加害者は全員逮捕されてしまえばいい。
・警察はよく町をまわって、DVを取り締まればいい。

とか言います。
「えっ?」と疑問が浮かぶのですが、話を聞いてみると、自分をDV加害者だと思っていないのです。
加害者の中には、「本物のDV加害者」がいるのですが、それを自分とは違う人と思っています。
「本物のDV加害者」は、自分よりもっと暴力をふるう人で、なんの非もない素晴らしい女性を、意味なく虐待する人のことを想像しています。
自分もまったく同じことをしているのですが、特有の「特権意識」で、自分だけは違うと思ってるんです。

そんなDV加害者ですから、自分がDVだと認め、治ろうと努力することはまれです。
また、格好をつけて、「カウンセリングに行く!」と言って、行く人もいますが、数回でやめてしまったりすることが多いです。
DVがバレて、周りからのふんいきを察して、治療するような気になったり、言い訳的にカウンセリングに行ったりすることもあります。
ですが、本当は、全然やる気ないんです。

「俺、治って君を迎えに行くよ!」と、夫婦で手をとりあい涙を流す場面を、私は何回も見てきました。
ですが、その意味なくステキな場面は、夫が作り出した「その場を最速で離れるための演技」です。
私に説教されそうな場面から、逃れたいだけなんです。
やっと逃れて家に帰り、自分で加害者プログラムを探すとなると、やってもらうのがあたり前の加害者にはできないことが多いです。
自分で加害者プログラムを探して、さらに電話するとなると、私の感触では1割もできないと思います。

DVは、それだけで「自己愛性人格障害」と言われるくらい、加害者の人格全体で起こっていることです。
他人には、その人の人格を変えることなんてできません。
ですから、本人が心底やろうと思って、人格を変えるくらいの勢いでやらないと、成果は見えてきません。

そうとう治療した人も何人か見ていますが、その人たちは、
「死ぬよりつらい治療だった。」とか、
「以前とはまったく違う人間になりました。」と言われます。
今までつちかってきた価値観を、まったく変える必要があるからです。

心理療法に詳しくなりすぎた加害者たち

ここに、カウンセリングや加害者プログラムに続けていくことができた、努力家でラッキーな加害者がいるとします。
本人も、周りの人に応援され、治る気マンマンです。
ですがその中でも、さらに問題を抱えてしまう加害者も多いんです。
カウンセリングや加害者プログラムに通ううちに、心理療法に詳しくなりすぎ、
心理療法を次のDVのネタにする人たちがいるということです。

加害者はいつも、加害者は暴力を操っているでお伝えした、「夫の桃源郷」に行くことばかりを考えています。

加害者の頭の中では、
・妻を言い負かすネタ探し。
・DVをどう言い訳するかの理論探し。
・妻に自慢できる雑学ネタ探し。
・どうしたら、人に印象よく見られるか。
・どうしたら、いつも話題の中心でいられるか。
・妻が思い通りになってくれる世界の想像。

などを考えることで満たされています。

もうずっとこの考え方ばかりで生きてきましたから、それがあたり前だと思っています。
普通の人(DVしない人)がどんなことを考えて生きているのか知りません。
誰も何を考えているかなんて話しませんから、想像すらできません。
他人の頭の中を見せてもらうこともできません。
ですから普通、人が生きていて、別の価値観が自然に自分のものになることはありません。

それが残念なことに、加害者の治療とは、
「もう出来上ってしまっている思考回路を、別のものにする」
ということなんです。
自然治癒はありえないことです。
誰もが簡単にできることではありません。

治療を決めた加害者は、そんなほとんど不可能とも思えることをしようとしています。
なので、DVを克服できない人が多いのは、当然のことなんです。
カウンセリングや加害者プログラムでも、うまくいかない人が多いです。

そして、うまくいかない人が、今までの思考回路を使って考えること・・・。

それは今の状況から、自分のDVに都合のいい情報をとりいれることです。
今、目の前の状況・・・カウンセリングなどの場です。
カウンセラーの発言から、情報を取りはじめます。
そしてその情報を、自分のDVに都合のいいように変換して解釈していきます。

そうです。

カウンセリングから帰った夫は、カウンセラーが言ったことをそのまま妻にレクチャーし始めるんです。
自分が学んで実践しなければならないことを、妻に教えて自分のつらさをわかってもらおうとします。
妻にはまったくいらない考え方を妻に強制して上に立ち、自己満足します。

そしてそれがDVに発展していきます。
「俺がうつっぽいことに、一緒にいるお前がなんで気が付かないんだ?」
「カウンセラーは俺が愛情不足で育ったと言っている。君は俺に愛情を注ぐべきだ。」
「俺がこれだけ苦しんでいるのだから、妻のお前も苦しめ。」
「俺は今日カウンセラーに、俺がしてきたことを全部言えと言われたんだ。だからお前も今までしてきたことを全部言え。」

などと言って、妻を巻きぞえにしてしまいます。

もちろん妻には必要のないことですし、妻にはどうにもできないことです。
なのに夫はまた、妻のにえきらない態度に腹を立て、暴力をふるうという展開です。
夫は、にわかに治る気になっていたとしても、どうやって治っていくのかわかりませんから、すぐ自分の思考回路に戻ってしまいます。

そしてせっかちなDV夫は、カウンセリングや加害者プログラムでは治らないと決めつけて、やめてしまいます。
カウンセリングや加害者プログラムに行く前は、盛大に、感動の涙まで流して、おおさわぎして始めたのに、やめる時は静かです。
DV夫は静かに家に帰っています。
そして・・・。
周りがまったく気づかないうちに、DVは再開してしまっているんです。

じゃあ、やっぱり無理なの?

このページでは、加害者が更生・治療するのがむずかしいと、さんざんお話ししました。
これから治そうとしている人の気を、そいでしまったかもしれません。
もうやる気が、全くなくなってしまったかもしれませんね。
でも少数ですが、DVを乗りこえて、ふたり、手を取りあっている夫婦もいます。

夫が治療して、うまくいっている夫婦のほとんどの場合で、いったん妻が逃げて離れています。
DV夫を本気にならせるには、妻がいてはダメなんです。
妻が夫のために何かしようとすると、かならず裏目にでてしまいます。
夫は妻に甘えてしまいますから。
治療中の夫は、いったん1人になる必要があります。

そして、更生・治療にはとても長い時間がかかります。
たいていの施設で、うまくいっても、最低1年以上はかかるプログラムを実施しています。
夫の「俺は変わった。」という言葉はまったく信用できません。
夫のその言葉にウソはなく、治療の成果が見られていたとしてもです。
中途半端にもとに戻すと、逆効果になってしまいます。

加害者の更生・治療には、
①加害者が本気で自分を変える気になること。
②妻も考え方を変えること。
③とても長い時間、継続しなければならないこと。

など、困難はつきまといます。
でも、やろうとしなければ、一生DVは止まりません。

妻を「奴隷」としてではなく、「自由な意思を持った人間」として、対等な立場で愛せるようになること。
できればいいですね。

次のDV男に好かれる女性…①からは、被害者女性について、考えていきます。
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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