加害者は虐待されていた?
あなたも聞いたことがあるのではないでしょうか。
「DV加害者は小さいころに虐待されていた。」と。
まことしやかに言われている、DV加害者への大きな疑問です。
被害者の女性もよく、「夫は虐待されていた被害者だ。」と言います。
法務省の報告でも、ちょっと古いですが、
法務総合研究所研究部報告24より引用
東京都が平成9年7月から同年8月までに行ったアンケート調査によると,夫やパートナーが暴力を振るう理由として,夫やパートナーの成育歴と関連性があることが示された。被害者によると,17.3%の夫・パートナーの「育った家庭に暴力があった」(52件中9件)と言う。
となっています。
私もDV相談員になる前はそう思ってました。
ですが、何年かDV相談を受けているうち、疑問がわいてきました。
んです。
このページでは、この「DV加害者ははたして虐待された経験からDV夫になったのか?」について考えていきます。
この説には、色々な意見があると思います。
私は学者ではありませんし、大規模な調査が行えるわけでもないので、正解を発表できるわけではありませんから、現場の意見ぐらいに思っていただければいいかな?と思ってます。
DV相談員と話してみて・・・。
DV被害者の話を聞いているとよく、「夫は虐待されていたから。(暴力をふるうのはしかたない。)」と言います。
DV夫と話をしても、「自分は虐待された経験がある。」と言う人が多いです。
その数の多さに、疑いの気持ちがわいてきました。
ほとんどの人がそう言うんです。
ひとりで考えて、もんもんとする日が続いていました。
そんな時ちょうど、圏域のDV相談員の会がありました。
相談員同士でDVについて話しますから、聞いてみることにしました。
相談員Aさん、「あ~~、よく言うよね。」
相談員Bさん、「そうね。ほとんどの人が言うかも。」
相談員Bさん、「私も多すぎると思ってたよ。虐待自体がそんなに多いわけじゃないし。」
相談員Cさん、「ええ。冷静に考えても数字が合わないですね。」
相談員Aさん、「言い訳か、同情をひこうと思って言ってるだけなんじゃない?」
相談員Cさん、「そうでしょ。そうでしょ。勝手な被害者意識。」
相談員Bさん、「自分を守るためには何でもするからね。加害者は。」
と、こんな会話でした。
「ですよね~。」しか言っていないような気もしますが、私も加害者がそう言っているだけなんじゃないかと思っています。
DV加害者と虐待の関係
文献をみますと、調査はいろいろあるので、目を通してみます。
DV加害者が虐待されていたとしている調査とそうでない調査があります。
でもよくよく読んでいると、「虐待と関係がある。」としている文献は、必ず、被害者(加害者)がそう言っているという調査です。
上の総務省の報告もそうですが、被害者が言ったことの件数です。
そして仮に、加害者の17.3%の家庭に暴力があったとしても、この数は大きい数字ではありません。
男性に対して暴力をふるう、暴力的という男性が、子どものころ虐待を受けたという研究は多くあります。
ですが、とりわけ女性を攻撃する男性については、虐待との関連性はそれほど明らかになっていません。
暴力的な環境にいた子どもが大人になって、男女かまわず暴力をふるうことはあります。
でも、女性だけをターゲットに暴力をふるうのは、別の要素が関係しているようです。
「虐待」→「暴力的」は成り立ちますが、
「虐待」→「女性に対しての暴力」は成り立たないということです。
ひとつ、アメリカの調査でおもしろいのがあったので紹介します。
全米地方検事協会が発表している研究です。
研究者がDV加害者に子どものころ虐待を受けたか聞いていきます。
すると、質問を受けた男性の67%が、あると答えました。
研究者は次に、同じ質問をするが、ウソ発見器にかかってもらうと伝えました。
すると、さっきの答えを訂正したいという人が次々とあらわれ、結局あると答えた人は29%になってしまいました。
とりあえず、虐待があったと言っておこうという感覚がうかがえます。
DV加害者のウソ
DV加害者の心理の③事実を自分の都合のいいように解釈する。にもあるように、DV加害者は何でも自分に都合のいいことであれば、ウソでもなんでも平気でしゃべります。
DV夫は「子どものころに虐待された。」と言えば、世間が大目に見てくれることを知っています。
何度も言いますが、DV被害者はよく、「夫は虐待されていたから。(暴力をふるうのはしかたない。)」と言います。
その話で丸め込まれる女性は多いです。
日本人は、情緒的に考えるところがあるので、特に多いと思います。
でも、考えてみると、虐待された被害者だからって、DVをやったという事実が変わるわけではありません。
それも、DV夫の作り話である可能性も高いです。
DV夫は同情をひくことによって、暴力を正当化していきます。
情緒的でやさしい女性は、同情することで、暴力に立ち向かうことに罪悪感をいだきます。
女性のほうは、誰にも言えなくなり、DVが発覚するのが遅れてしまいます。
DV夫に対して、同情したり、共感したりするのが悪いとは言いません。
でもかわいそうだからと言って、加害者のわなに、自ら飛びこんでいかなくてもいいでしょう。
DV夫はあなたの優しさに付け込んできます。
そんな優しい女性を、DV男はいつも狙っています。
次のDV加害者の治療では、加害者の治療の現状についてお話します。
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。