DV加害者の心理
相談を受けていると、DV夫が同じような発言をしていることがわかってきます。
相談に来てくださった方から聞いたDV夫の発言や、会うことのできたDV夫から見える心理、特徴をまとめてみました。
すると、8つのカテゴリーにだいたい集約されていきました。
その8つは、
「DV加害者の心理」
「DV加害者の特徴」
となりました。
全部書くと長くなるので、心理編と特徴編に分けてお伝えしていきます。
このページでは、DV加害者の多くに共通している心理を挙げていきます。
①パートナーをコントロールしたい。
DV夫は、DVの定義と4つの暴力の種類にあるように、暴力を使って妻を「奴隷化」していきます。
妻の親や親せきを批判して、連絡を取らせないようにします。
外食などを制限して、友達付き合いをやめさせたり、情報操作して友達のことを嫌いにならせたり、対立させるように仕向けます。
仕事をさせず、家事ができる妻をたたえて、家の仕事ばかりさせ、外の世界から引き離します。
テレビを制限する夫も多いです。
他の男性とあいさつをしているだけで嫉妬して、男性との接触をすべて断たせます。
家の中に閉じ込めて、自分に都合のいい情報だけを妻に与えます。
妻は間違った狭い情報だけを与えられて、今までつちかった常識や、思想をくつがえされていきます。
夫の作った勝手なルールに従わされ、できなかったり反抗すると、暴力をふるわれます。
妻は夫のわがままを聞き、従順にしていることが一番安全だと、体で覚えていくのです。
このやり方は、昔から独裁国家やカルト教団がやっている、洗脳と同じ構造です。
妻の人権なんてありません。
加害者は暴力を操っているでお伝えした、「夫の桃源郷」に妻を無理やり連れて行こうとしています。
夫は、家族の独裁者、あるいは教祖になろうとしているのです。
②自分を特別だと思っていて、特に女性を下に見ている。
DV夫は、家族の中で自分は特別な存在で、自分だけの権利や許される免除があると考えています。
DVの直接的な原因は、この「自分は特別」という考え方からきています。
劣等感も強いのに、その裏返しである「特権意識」も強く持っています。
それによってバランスを取っていると考えられます。
DV夫の中には、はっきりした性別での役割があります。
「男は働き、家族を養う。」
「男は強く、家族を外敵から守る。」
「夫の言うことが正しく、家のことはすべて決定する。」
「女は家庭に入り、夫と子どもの世話をするもの。」
「女は弱く、頭が悪いので、男が教育しなければならない。」
というような古くさく、差別的な固定観念を持っています。
そして家を守っているのだから、
「妻に身の回りの世話をしてもらうのはあたりまえ。」
「妻に気分や心を気遣ってもらうのはあたりまえ。」
「妻に性的欲求を満たしてもらうのはあたりまえ。」
「妻に服従してもらうのはあたりまえ。」
「自分のDVさえも、全部妻のせいにするのはあたりまえ。」
です。
何でも、「してもらうのがあたりまえ。」で、「してあげる。」ことは特別なことと考えています。
なので、家事を少し手伝っただけで「手伝った。手伝った。」と、しつこく言ったりするんです。
今の時代、農業をしない家が多くなり、機械化も進んで、家庭での男の強さが必要な仕事はとても少なくなっています。
DV夫は、家庭ではほとんど役目を果たす場面がないのに、旧石器時代のような妻の役目を押し付けます。
家事・育児・夫の身の回り・夫の気分の世話まで全部押しつけて、妻に依存してきます。
その上暴力の原因を、「妻がバカなせいだ。」などと言います。
自分の気分でやっている暴力のことまで、妻のせいにしてしまうんです。
そして夫は、妻を洗脳して、あたかも「自分を癒す道具」として使います。
「人間」ではなく「物」扱いです。
「物」なので、人間的な付き合いではなく、「所有している」ということです。
ですから、自分の都合で動かないとキレて暴力をふるってもいいんです。
自分の「物」、それも奴隷として育てた「物」をどうしようが勝手だし、他人に何も言われる筋合いはないと思っています。
③事実を自分の都合のいいように解釈する。(合理化)
DV夫は、事実が白でも黒にしてしまいます。
基本的にウソつきです。
付き合っている頃は、
・友達ほとんどいないのに、「友達が多くてしたわれている。」
・普通の仕事っぷりなのに、「仕事ができるから出世がはやい。」
・前の彼女にふられて、ストーカーまがいのことをして警察に通報されてしぶしぶ別れたのに、「ウソをつく女だったから、こっちから別れてやった。」
などと言ってアピールします。
ふつう、ウソばかり言う人はそんなにいませんから、女性のほうも全部がウソだなんて思いません。
彼の言うことが本当なのか、調査までしません。
結婚してから、だんだんウソが発覚するはずですが、DV夫は妻を「社会的隔離」します。
外の情報を入れず、妻を家の中に囲ってしまうので、ウソの発覚も遅れるという寸法です。
結婚してからは、例えば、妻がお隣さんの男性とあいさつをしただけなのに、浮気をしていると嫉妬します。
「隣の男と付き合っているんだろう。」
「お前の目は恋している目だ。」
「だから最近俺に冷たい。」
「俺と別れようとしている。」
「駆け落ちの段取りをしていたんだろう。」
と、ありもしないことばかりを並べ立て、妻に詰め寄ります。
夫が勝手に決めたルールなのにできていないと、妻のせいにします。
例えば、掃除ができていないと、
「お前のせいだ。こんな汚い環境で生活させられる俺の身にもなってみろ。」
と、妻を責め立てます。
最後には、自分のDVまで妻のせいにしてしまいます。
・妻が「やめて」と言っただけなのに、「妻が文句ばかり言って困った。」
・妻が受け身を取っただけで、「妻が自分を受け入れてくれない。」
・妻がふり払った手が夫の顔に当たっただけで、「妻が暴力をふるってきた。」
など、夫の方はやりたい放題しておいて、逆に被害を受けたように言います。
もし私がDVはいけないことだと言っても、DV夫は「じゃあ、妻の尻に敷かれる恥さらしになれって言うのか?」と反論します。
実に短絡的です。
④DVを愛だと思っている。
「DVは妻を愛してるからやっていることで、何もできない妻を教育している。」という考え方です。
DV夫はよく、
「愛があるから、俺が養ってやっているんだ。」
「愛があるから、忠告するんだ。」
「愛があるから、俺を怒らせても別れないんだ。」
「愛があるから、お前が人生をムダにするのを見ていられないんだ。」
ときれいごとのような、変な言葉を口にします。
そして愛のために暴力をふるう戦士気取りなのですが、相手を間違っています。
戦わなければならないのは外敵であって、身内、それも愛する妻を攻撃するとは。
でも、夫が妻を愛しているのはウソではないんです。
心にわいてくる、熱い気持ちを「愛」と呼んでいるのだと思いますが、それではつじつまが合いません。
だったら優しくするのが普通です。
「愛」という感情を勘違いしているのではないでしょうか。
DV夫が「愛」と呼んでいる、心にわき上がる熱い気持ちは普通の「愛」ではありません。
「妻から愛されたい」という気持ちです。
上記の②では、DV夫の特別意識のことを取り上げていますが、DV夫は全部「してもらう」がベースです。
何だか熱い気持ちはあるのですが、「愛する」時どうやっていいか、DV夫は知りません。
「してもらう」ことを「愛」と思っているので、それが完璧にできない妻に対しては暴力をふるいます。
暴力によって、妻が成長してくれると思っています。
いわば、暴力が「愛」であり、「教育」なんです。
加害者の怒りが先か・DVが先か
DV夫はよく、「俺を怒らせたから(暴力をふるって)やった」と言います。
そう言って、DVを妻のせいにし、成長に手をかしたと思っています。
でもよく聞いていると、「怒ったからDV」ではなく、「DVだから怒った」ことがわかります。
DV夫がしてほしいことは、「不可能」だったり「非現実的」なことです。
妻にできるはずもないことを期待しますから、妻はその期待にすべてこたえることはできません。
それができないと、DV夫は怒りくるい、感情的になります。
そして暴力をふるうわけですから、妻には防ぎようがありません。
例えばDV夫が、妻と
「お互いケンカは絶対せず、毎日愛していると言おうね。」
とルールを決めます。
このルールの本当の意味は、
「妻だけに課されたルールで、妻は夫にどんな意見も言わずに従い、毎日夫に愛していると言う。」
ということです。
普通の夫婦関係なら、こんなことできるわけありません。
そして夫は、できない妻に暴力をふるいます。
それで妻の「自業自得」だと本気で思っています。
DV夫の想いは、いつも一方的です。
夫が勝手にできないことを妻に指示して、勝手に怒っているだけなんです。
できないことを指示するのも、暴力のひとつです。
DV夫ができもしないルールを強要しなければ、怒りがわくこともありません。
このカン違いをDV夫に解らせるのは、至難の業です。
次のDV加害者の特徴では、このページの続き、特徴編についてお話しします。
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。