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大丈夫。自由は怖くない

難易度別の事例

この項目では、
難易度Ⅰ・・・夫が会社員(事務職)で、妻がパート職員の事例(子どもはいない)。
難易度Ⅱ・・・夫が会社員(営業)で、妻が主婦。子どもが0才2か月の事例。
難易度Ⅲ・・・夫が医師で、妻が主婦。子どもが小学校1年生の事例。
難易度Ⅳ・・・夫が無職で、妻は会社員。子どもが5才の事例。
難易度Ⅴ・・・夫が自営業で、妻は夫の会社の手伝い。子どもが中学校2年生と小学校6年生の事例。
難易度Ⅵ・・・夫も妻も公務員で、子どもが小学校4年生と2年生の事例。
の6つの事例についてお伝えしています。

今回は、難易度Ⅱ・・・夫が会社員(営業)で、妻が主婦。子どもが0才2か月の事例です。

※事例に登場される方には了解をもらっていますが、本人と特定されるような記述はしないです。
ひどい暴力の現場も書きませんし、どうやって逃げたかについても、加害者に情報を与えてしまうようになるので書きません。
ご了承いただけると幸いです。

難易度Ⅱの事例

【夫が会社員(営業)で、妻が主婦。子どもが0才2か月の事例】

Yさんは、結婚一年半、妊娠5か月の時に相談に来られました。
ちょうど、産婦人科医院で母親学級に行くと言って相談に来ることができました。
夫は彼女が妊娠してから暴力をふるいだしました。
夫の言い分は、
「妻がつわりを理由に家事をあまりしないから。」
とのこと。

さすがにお腹を狙うことはしないと言っていましたが、他はあざが目立つ感じでした。
Yさんは、まだ夫の洗脳が浅かったので、
「今度暴力をふるってきたら、別れるって言おうと思う。」
と言っていました。
夫は会社員ですが営業なので、外回りの仕事が多いです。
仕事の間に家に帰ってくることは簡単なので、彼女にも動きが読めません。
私は、
「今は様子をみて、もし逃げるとなれば、作戦が必要だね。
もしもの時のために、夫に仕事の話をふったりして、夫がどんなパターンで動いているのかを把握できればいいね。」

と言って相談を終えていました。

そして・・・。
待てど暮らせど、Yさんが相談に来ません。
こちらからの連絡は、危険がともなうのでできません。
心配はつのるばかりです。

相談から3か月が経とうという頃、Yさんから電話がありました。
彼女の話は、
「夫に、今度暴力をふるったら別れるって言ったし、あれからつわりが治って殴られていないから、もう大丈夫。」
とのことでした。
私たちは夫に言わされていないかを確認して、(その方法は内緒です。)言わされていないようなので安心しました。

Yさんの電話から4か月ほど経った頃、警察から、彼女が乳飲み子を抱えて逃げてきているので、逃がす段取りをしてほしいと依頼がありました。
私はびっくりして、すぐに警察に向かいました。

さっそく彼女に話を聞いてみます。
前回相談した後、暴力はおさまっていたのですが、子どもが産まれてから産後の肥立ちが悪く、家事がまたあまりできなくなって、暴力をふるわれだしたそうです。
暴力のほかに、夫は子どもが産まれたときに、男の子ではなかったことで機嫌を悪くしていて、わが子を抱こうともしないそうです。
彼女は、そんな夫に嫌気がさし、
「暴力をふるうなら、今度こそ別れる。」
と言ったそうですが、夫は、
「出ていけるものなら出ていけ。」
と言って取り合わず、体力の弱っている彼女に暴力をふるいました。

彼女は、出産から2か月たち、体力も回復してきたので逃げようと思い、警察に駆け込んだそうです。
彼女は、
「子どもが父親の顔を覚える前に逃げたい。」
と言っていたので、賢明だなあと感心しました。

ほどなく彼女は、配偶者暴力相談支援センター(婦人相談所)のシェルターに一時保護されました。
彼女のご両親はもう他界されていましたし、お友達も作れない状況でしたから、特に警察に見守りをお願いすることはしませんでした。

妻が逃げたとわかった夫は、市役所に怒鳴り込んできました。
どこに怒鳴り込んでいいのかわからなかったらしく、市民相談の係で大声をあげました。
「うちのやつをどこに誘拐したんだ!」とか「訴えるぞ!」などと怒鳴っていました。
本当は、Yさんは警察に逃げたので、もし怒鳴り込むとするなら警察なのですが、その勇気はなかったようです。
市民相談の係で、職員に暴力をふるおうとしたので、強面の課長にすぐ取り押さえられて、警察に連行されました。

結局夫は、怒鳴り込むべき警察に行けたわけですが、妻がどこに逃げているのかなんて教えてもらえるはずもなく・・・。
次の日家には帰れたようですが、数日して保護命令が下され、妻とは全く会えなくなってしまいました。

この夫について

この夫は、
「夫は外で働き、妻は家で夫の帰りを大人しく待つ。」
といった、とても典型的で、旧式な考え方の持ち主です。
妻は夫のカバンを持ち、「行ってらっしゃい」と夫を送り出します。
夫が帰ってくると、食事かお風呂か聞いて、夫の服を脱がせて片付けます。
そんな、昔見た昭和のホームドラマのような生活を強制されていました。
夫は妻に敬語で話させ、妻には家事しかさせません。
妻の趣味も許しませんし、女性のお友達と出かけるのもダメです。

夫の言い分は、
「妻は家事さえしていればいいのだから、楽なものだ。」
「女の役目は、夫を立てて、夫の仕事が上手くいくよう全力を尽くすこと。」

といったようなことで、それができなければ暴力をふるわれて当然と思っているのでしょう。
今時こんな考え方の人は珍しいと思われるでしょうが、一定の確率で存在します。
そして、DV夫に多い考え方の一つです。

夫がこんな考え方でも、妻が同意して、お互いが幸せなら何の問題もありません。
夫を立てて、妻が家を守るといった生活がしたい女性もいるからです。
無趣味の女性もいますし・・・。
でも暴力をふるっていい理由は何一つありません。

後日談

結局彼女は、2週間後に、遠い街にアパートを借りることができました。
保護命令もすぐ出たので、夫とは全く会わずに済みました。
最初は生活保護を受けましたが、保育園に子どもさんを預けて働き出し、半年程で、生活保護も終了しました。
夫は慰謝料なし、財産分与なしを離婚の条件としてきたのですが、彼女はもう夫とは関わり合いたくないと言って条件をのみ、調停も早々と離婚しました。

私は彼女に、
「今度は焦らず、じっくり探してね。子どももいるし、結婚も、急がなくていいから、逆に選び放題よ。」
と笑い話でアドバイスしていました。
彼女はそれから子育てしながら仕事もがんばり、3年後には、とても優しい人と再婚しました。
彼女は、
「一回失敗してるから、見る目が養われたし、じっくり選べました。」
と言っていました。

こんな話を聞くと、涙が出てきます。
DV被害にあった女性は、自信をなくしてしまいますから、再婚の条件は、低く低くなってしまいます。
「こんな私なんか誰も相手にしてくれない。」と、難ありの男性でもしかたないと思ってしまうんです。
「こちらから選ぶ。」なんて心理状態になるには、よほどの努力や考え方の転換があったことでしょう。

すばらしいですね。

次の事例Ⅲ…地位の高い夫では、夫が医師で、妻が主婦。子どもが小学校1年生の事例についてお話しします。
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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