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大丈夫。自由は怖くない

保護命令とは?

保護命令制度は、DVで逃げる時、一番核になる制度です。

法的なことはDV防止法についてに詳しく書いていますが、こむずかしいので、ここでわかりやすく説明していきます。

保護命令には、接近禁止命令と、退去命令の2つがあります。
加害者に対し、被害者に近寄らないこと家からの退去などを命じる決定です。

<接近禁止命令>
①被害者への接近禁止命令
被害者の身辺のつきまといや、勤務先の付近をはいかいすることを6ヶ月間禁止する命令です。

②被害者への電話等禁止命令
被害者に対する電話やメール、面会の要求など一定の迷惑行為をあわせて禁止する命令です。
被害者への接近禁止命令と同時に又はその発令後に発令されます。
禁止される内容は、
・面会を要求すること。
・被害者の行動を監視していると思わせるようなことを告げたり、それがわかるようにすること。
・著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
・無言電話をしたり、緊急でないのに、連続して電話・FAX送信・電子メールを送信すること。
・緊急でないのに、午後10時から午前6時までの間に電話・FAX送信・電子メールを送信すること。
・汚物、動物の死体など、著しく不快又は嫌な物を送ってきたり、見えるところに置くこと。
・名誉を傷つけるようなことを言ったり、それがわかるようにすること。
・性的羞恥心を害することを言ったり、性的羞恥心を害する文書、図画などの物を送ってきたり、見えるところに置くこと。
です。

③被害者の同居の子への接近禁止命令
被害者と同居する未成年の子どもが対象となります。
子へのつきまといや学校等の近くをはいかいすることを禁止する命令です。
認められると、被害者への接近禁止命令と同時に又はその発令後に発令されます。
※子が15歳以上の場合は子の同意がある場合に限ります。

④被害者の親族等への接近禁止命令
実家など被害者と密接な関係のある親族、知人、支援者も対象とすることができます。
親族等へのつきまといや住居、勤務先等の近くをはいかいすることを禁止する命令です。
認められると、被害者への接近禁止命令と同時に又はその発令後に発令されます。
※親族等の同意がある場合に限ります。

<退去命令>
被害者が荷物を取りに行くなどに必要な期間として2ヶ月間、被害者と同居している家からの退去を命じる決定です。

命令が発せられた被害者には、警察の特別なサポートが与えられます。
命令に違反した加害者には、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられます。
そして保護命令は、身体的暴力があったときのみなので、注意が必要です。

<この「加害者」とは?>
①あなたと結婚していて、婚姻関係にある時に、あなたに暴力(又は生命等に対する脅迫)を行っていた人。(離婚して一緒に暮らしていない状態での暴力は、ここには入りません。)

②婚姻の届出をしていないが、事実婚の関係がある人で、事実婚の関係にあった時にあなたに暴力(又は生命等に対する脅迫)を行っていた人。

③事実婚関係にある彼氏・彼女で、事実婚関係にあった時にあなたに暴力(又は生命等に対する脅迫)を行っていた人。
※ここでいう「事実婚」は、一緒に暮らしている状態であることをいいます。
具体的には、住民票が同一世帯である、賃貸借契約の名義人が連名になっている、住居費や食費などの生計費が共通である等の資料によって判断されます。
なお、ルームシェア、学生寮、社員寮での共同生活や血縁・親族関係による同居などは、ここには入りません。

申立ての提出

申立書の出し方も一応説明しますね。

保護命令は、被害者本人が申立てをして、裁判所が決定しますから、裁判所に提出します。
「申立書」の様式は、お近くの地方裁判所や警察、配偶者暴力相談支援センター(婦人相談所)、女性センターにも置いてあります。
その地方裁判所をネットで調べて、様式をダウンロードすることもできます。

申立書を提出する裁判所は、
1.加害者の住所か、住んでいるところ
2.被害者の住所か、住んでいるところ
3.暴力・脅迫が行われたところ
を管轄する地方裁判所のどこかですが、たいていは加害者の住所の管轄に出すようになると思います。
住民票のあるところに住んでいない場合は、住んでいるところの管轄の地方裁判所になります。

申立書は正と副の2部用意します。
内容に沿って、レ点や○をしていきます。
ほとんどのことが書いてあるので難しくはないと思いますが、逃げたばかりの心理状態では、誰かの助けがいるかもしれません。
そして、事前に配偶者暴力相談支援センター(婦人相談所)や警察などに相談したことを書く欄があります。
まったく相談したことがない人は、公証役場での宣誓の証明(有料)が要ります。
金額も張るので、配偶者暴力相談支援センター(婦人相談所)や警察に相談した方が速いです。

申立手数料は、1,000円の収入印紙を正の申立書に貼付する方法で納付します。
そして、予納郵便切手を添付します。
こちらは貼りません。
この予納金は、各地方裁判所で金額が違いますし、切手の種類と枚数の指定があるので、あらかじめ調べる必要があります。
(ちなみに東京地方裁判所の予納郵便切手は2,500円分で、内訳は、500円×2枚、280円×2枚、100円×5枚、50円×5枚、10円×17枚、1円×20枚となっています。)

添付書類は、
・戸籍や住民票など、夫婦又は事実婚であることがわかる書類。
(事実婚の場合は、住民票や家の契約書の写し、公共料金の支払請求書など、事実婚であったことがわかるもの。)
・暴力、脅迫を受けたことを証明するものと、今後、生命、身体に重大な危害を受けるおそれが大きいことを証明するもの。
(けがの写真や診断書、メールやLINEの画像の写し、陳述書など。)
・子への接近禁止命令を求める時で、子どもが15才以上の時は子どもが書いた同意書と筆跡を証明するもの。
・親族等への接近禁止命令を求める時は、その親族の同意書と筆跡を証明するもの、申立てる人との関係が証明できる戸籍や住民票や、親族に被害が及ぶかもしれない事情がわかるような陳述書など。

上記の書類でたいていは大丈夫ですが、裁判所によっては他に用意しなければならない書類もあります。
また、個々のケースによって事情も違うので、それに応じて書類が増える可能性があります。

シェルターに逃げた場合は、相談員が自動的に申立の流れを作ってくれます。
相談員のいうとおりに記述したり書類を集めればいいですし、ほとんどの作業を相談員がしてくれます。

ですが、シェルターに逃げていなくて保護命令を申立てたい場合、一人でもできなくはないですが、DV相談をした実績が要りますし、個々のケースで提出する書類も違ってきます。
手続きの勉強をしたり、情報を集めたりと、時間と労力が無駄にかかるので、配偶者暴力相談支援センター(婦人相談所)やDV専門のNPO法人などに、作成を手伝ってもらうことをおすすめします。

さて、書類を全部そろえたら申立てを行います。
裁判所では、申立した日に裁判官と話すようになるので、手続きのために2.3時間は見込んでおいたほうが無難です。
裁判官の予定もありますから、事前に裁判所に電話連絡しておいたほうがいいでしょう。

保護命令はとても速く命令が出るので、早ければ1週間、遅くても3週間待てば結果が出ると思います。
あなたの自由のために、第一歩の保護命令が通ること、祈っています。

加害者が逮捕されたら?

ちょっと余談ですが、ここで加害者が逮捕されたあとの話をしておきます。
本来なら、1ページに大きく見出しをとって書きたいところですが、加害者にとって有利な情報しかないので、ここにちょこっとだけ載せることにします。

日本では、DV法が制定されて、やっとDVが犯罪と認められるようになりました。
加害者を逮捕できるようになって、大きく前に進みました。

加害者は逮捕されて保護命令が出ると、妻には近づけなくなります。
ですがもし、傷害罪で起訴されたとしても、軽いものなら罰金刑です。
重いものでも、初犯なら執行猶予がつくことがほとんどです。
なので、ほとんどの加害者が刑務所に行くことはありません。

加害者はもちまえの演技力で、警察での聴取、裁判での罪状認否など、上手にきりぬけます。
時にはしんみょうにしたり、時には同情を誘ったりと本当にうまいです。
裁判で、本当に反省している表情を見せたあと、帰る頃には、顔に満面の笑みをうかべています。
自分が上手にやれたことに自信を持ち、優越感さえ感じているんです。

そして加害者は家に帰ることができるわけです。
仕事も続けることができますから、数日休めば済む問題です。
なんだかムカムカするのですが、これが現状です。

また、別の問題がもう1つあります。
刑が重すぎると、被害者への不満が大きくなりすぎ、復讐する危険性があることです。
加害者は、自分のしたことをすぐ被害者のせいにしますし、執着します。
被害者は、保護命令のあけたあと、加害者が釈放された・刑務を終えたあとなど、ひと時も気がぬけません。

その後、加害者は反省して更生・治療に向かうのかというと、まったく向かいません。
日本には加害者への更生プログラムは実施されていません。
加害者を強制的に更生・治療させることは、不可能と言えるでしょう。

次の逃げる難易度では、パターン別に逃げる時の難しさをお話しします。
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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