逃げる前の準備
この項は、相談するときに気をつけることと少しかぶるのですが、逃げようとするとき事前から準備をしていた方が、ことがすんなり運びます。
ですが、準備中に見つかった場合、暴力が増すのは目に見えていますし、準備に時間をかけすぎると危ないです。
くれぐれも「できるだけ」にとどめておいて下さい。
一番気を付けてほしいのは、あなたの安全です。
そして、1人きりで考えて準備するのではなく、事前に相談に行くか、お友達などに手伝ってもらうかした方がいいでしょう。
事前に相談に行って、相談員と逃げる作戦を練るのもいいですし、お友達などに協力をお願いするのも、安心感が増すと思います。
ただし、複数のお友達に相談するのはやめましょう。
のちのち、夫にばれる可能性が、格段に高くなります。
逃げる前に準備しておいた方がよいものは、DVの証拠とお金です。
DVの証拠とは、
①DVが行われている様子を撮った映像。
②DVが行われている時、録音したもの。
③DVで負わされたケガやその直後の部屋の写真。
④夫からのメール。
⑤DVで負わされたケガで受診した時の診断書。
⑥DVの様子をつづった日記。
などです。
まず、「①DVが行われている様子を撮った映像。」と「②DVが行われている時、録音したもの。」です。
これらは、相談の時や、保護命令・離婚の手続きの際にたいへん役に立つものです。
でも、映像や録音物は、証拠としての効果はゼツダイなのですが、用意する難易度はかなり高いです。
映像や録音物を、その場で用意するのは難しいですから、夫が帰る前からずっと撮っていなければなりません。
それに、ビデオや携帯、録音機などは、大きくて見つかりやすかったり、音が不用意に鳴ったり、光ったりしてばれる可能性も高く、細心の注意が必要です。
DV被害者は、自信がなく、ウソをつくのも下手なかたが多いです。
いつもと違う態度などで、ばれてはいけませんから、くれぐれも無理はしないでください。
次に、「③DVで負わされたケガやその直後の部屋の写真。」です。
これは夫がいない時にできるので、用意しやすいです。
殴られた後のきずの写真や、DVの後の荒れた部屋などの写真を撮っておくといいです。
ですが、携帯で撮ったきずの写真を、携帯チェックする夫に見られるとか、写真を現像して隠していたが、場所がばれるなどの危険があります。
夫の普段の行動などから、絶対見つからない場所を見つけましょう。
実家や、お友達などに預かってもらうのも、ひとつの手です。
そして、「④夫からのメール。」ですが、夫のメールは、残しておいた方がいいです。
脅しのメールやLineなどの内容は、有力な手掛かりになりますから、ぜひ取っておきましょう。
メールの数に制限のある携帯もあると思いますので、なるべく他のメールを控えたり消したりして、夫のメールがずっと残るようにしましょう。
次は、「⑤DVで負わされたケガで受診した時の診断書。」です。
これも後で、とても役に立ちます。
医師という、第三者であり医療の専門家が書いた診断書は、証拠としての信用度が高いですから、取っておくといいです。
ですが、病院にもよりますが、2,000円~5,000円ほど診断書料がいるので、余裕のある時でけっこうです。
診察を受けるだけで、病院にカルテが残りますから、それも有効な証拠です。
あと、「⑥DVの様子をつづった日記。」です。
日付と時間、どんな会話からの始まりで、どんな暴力だったかを書いていきましょう。
あなたの想いは少なめにして、起こった事実を淡々と書くのがいいです。
以上、DVの証拠となる6点の物を挙げました。
あとは、お金です。
DVの定義と4つの暴力の種類のとおり、DVは4種類の暴力がからみ合いますから、経済的暴力のため、お金を持たされていない被害者は多いです。
なので、これこそあなたに「できるだけ」を用意しましょう。
あとであなたを救うのは、人の助けとお金です。
お金を貯めることを、DV夫は良しとしない場合が多いですし、お金に関して独特なイメージを持っている場合が多いです。
夫に植え付けられたイメージを、すぐ変えるのはむずかしいでしょう。
私を含め、お金のことを大切に言う人を、「いやらしい」と思うかもしれません。
でもそれは、「DV夫の価値観」の中でのものです。
「DV夫の価値観」は、「外の世界の価値観」とはまったく違うものですから、ゆっくり変えていきましょう。
さて、DVの証拠とできるだけのお金を用意したら、さっさと逃げたいですよね。
逃げる当日の持ちもの
何だか子どもの遠足みたいな題になってしまいましたが、実際、子どもが遠足に行くように、ワクワクしながら逃げましょう。
私の経験則なので立証はできませんが、暗い気持ちで逃げる人より、明るい気持ちで逃げられる方が、成功率が高い傾向にあるように思います。
バカバカしいと思うかもしれませんし、明るい気持ちになんかなれない方も多いと思いますが、
今日「逃げる日」があなたの新たな人生の門出になりますから、大切な一日にしてくださいね。
逃げる当日の持ちものは、基本的にあなたがこれから暮らしていく上で大事なものです。
大事なものは人それぞれで微妙に違うので、リストになくてもあなたの大事なものは持って行ってください。
一般的に大事なものを挙げます。
・用意したDVの証拠とお金。
・通帳や印鑑、キャッシュカードなど。
・健康保険証(コピーでもいいです。)や母子手帳。
・身分証明書(運転免許証、パスポート、住民基本台帳カード、マイナンバーカードなど)。
・携帯や手帳、日記。
・着替えなどの自分と子どもの身の回りの必需品。(おむつやミルク、ランドセルや制服など。)
・(いつも飲んでいるなら)薬。
などです。
あと、できるようなら、家や土地の権利書や登記簿の写し、夫の通帳のコピーなど、夫の財産がわかるものの写しがあれば、十分です。
これは、離婚手続きの時、財産分与の話になれば役に立つものですが、何度も言うように、被害者は経済的なことは任されていないことが多いですから、無理はしなくて大丈夫です。
では、逃げましょう!
準備ができたと思いますので、さっそく逃げることにいたしましょう。
どこに相談したらいい?を参考に、あなたの今の状況に合わせて、相談に行ってくださいね。
欲を言えば、ハネムーン期に逃げるのが一番です。
たいてい妻は、暴力を受けた時は逃げる気があります。
でもそのあとすぐハネムーン期に入り、「この人はやっぱり私を愛してくれている。」などと思ってしまい、逃げる気が失せてしまうんです。
そして時期を逃し、またサイクルはぐるぐると回ってしまいます。
ですが逆を言えば、DV夫は暴力のあと、ハネムーン期に優しくすることで、妻の心はつかめたと安心して、ちょっと油断するんです。
妻への束縛の手を、一瞬ゆるめる時があります。
その時がチャンスです。
夫のことを愛しているからといって、同情はいりません。
夫がどんなに謝っても、すぐDVが治ったような例はありません。
夫がどんなに泣いて謝ろうが、土下座しようが、自殺しかけようが、情にほだされてはいけないのです。
ただのハネムーン期です。
DVからは、一旦離れる必要があります。
何はともあれ気をつけたいのは、足あとを残さず逃げることです。
逃げる準備ができても、いつもと同じように夫に接し、送り出してください。
いつもの買い物と同じ交通手段で家を出ます。
自分の車を持っているようなら、財産の1つですので車で逃げます。
もし、夫からのメールや電話があった場合、相談中であっても、いつもと同じように応対してください。
夫に、「あれ?今日おかしいな。」と思われたら、すぐ追跡が始まる恐れがありますから危険です。
そして、子どもさんがおられるかたは、お子さんも一緒に逃げます。
子どもさんと一緒に逃げる場合、事前に話をすると夫にばれる可能性があるので、逃げる当日にする方がいいでしょう。
子どもさんはあなたの味方ですから大丈夫です。
思った以上に、力になってくれることでしょう。
子どもがふびんだと言って逃げられない方もいらっしゃいますが、子どもが虐待される、または虐待を見せることは、一時期、身を隠すこととは比べ物にならないほどの「傷」を残します。
子どもさんのためを思うなら、DV夫とは離れるべきです。
もう一つ大事なことは、あなたの実家のご家族のことです。
元気なお父さんなどがおられる場合は、あまり心配いらないと思いますが、お母さん1人で暮らされているような場合には気をつけた方がいいです。
妻が逃げた後の、激高した夫の行動として、実家に行く可能性は高いです。
お母さんには、保護命令が出るまで、何とか家を離れてもらうのが一番の得策ですが、むずかしい場合は警察に相談してみましょう。
警察以外で相談している時は、相談員から警察に相談してもらいましょう。
個々の事情を考えて、対策してくれると思います。
もう準備万端、整いましたね。
では、逃げましょう。
次の、相談から逃げるまでの流れでは、相談に行き、逃げることになった場合のことを、相談に行った所別にお話しをしていきます。
あなたが上手に逃げられること、祈っています。