DVの定義と4つの暴力の種類
DV夫は意識的にも、無意識的にも、『暴力の技を駆使』して、効果的に使っていきます。
『暴力の技を駆使』するとは、
①「4種類の暴力」を駆使。
②「虐待のサイクル」を駆使。
③「暴力をエスカレート」させる。
の3つが代表的に言われていることです。
DV夫は、この3つの技をその時々で使い分け、被害者の体と心を追い込んでいきます。
DV夫の多くは、知らず知らずのうちにこれを身に着けていて、被害者の体も心も、自分の作った枠の中に閉じ込めてコントロールします。
DVの定義
DV夫が使う、3つの技を考えていく前に、ちょっとこちらを見ていただきたいと思います。
「DVの定義」と言うと、堅苦しいですが、一応・・・。
言葉のニュアンスを一定にするため、DVの定義についてお話しします。
DVは、英語の「Domestic Violence」の頭文字を取ったものです。
「Domestic」とは、「家庭内の」とか「家庭的な」という意味で、配偶者や親密な関係にある男女間の暴力のことです。
「親密な関係」には、恋人、元配偶者や、元恋人なども入りますが、親子・兄弟のような「家族」とは分けて考えられます。(夫婦間以外の「家族のDV」に関しては、また別の機会にお話ししたいと思います。)
※DV防止法の中では、{夫婦・事実婚}のみの定義なので、保護命令は、恋人などのデートDVの相手には発令されません。
DV相談には、デートDVの方も来られて相談されますが、一緒に暮らしていない場合の暴力では、公的なシェルターに逃がすことができませんし、保護命令も出ないので、民間のシェルターを紹介するか、別れるように勧めたり、日常の中のアドバイスをすることくらいしかできません。
けがなどがあった場合は警察に被害届を出して、一過性の障害事件として扱われることになります。
DV夫は気が小さく、他人にDVを知られるのを恐れている人が多いため、「Domestic」の名のごとく、家庭内という閉鎖的な空間で行われることがほとんどです。
そのためDVは、誰にも知られることなく、長期に渡って行われることになります。
そしてDV夫は、3つの技を巧みに操って、妻の気力、自尊心、思考力などを奪っていきます。
気づくと妻は、別人のようになってしまっているのです。
暴力の種類
では、DV夫は、どんな暴力を使って妻を別人のようにしてしまうのか。
この項では、4種類の暴力について見ていきます。
専門家によっては4種類でなく、5種類や、8種類に分ける方もいらっしゃいますが、ここでは、基本的な暴力4種類を解説したいと思います。
「4種類の暴力」
①身体的暴力
②精神的暴力(心理的暴力とも言われます。)
③性的暴力
④経済的暴力
です。
1つ1つ見ていきます。
①身体的暴力
身体的に脅かしたり、暴力をふるったりすることです。
平手打ち・殴打・蹴る・やけどを負わす・首を絞める・髪を引っ張る・引きずり回す・突き倒す・けがを負わせるような物を投げるなどです。
②精神的暴力(心理的暴力)
大声で怒鳴る・無視して口をきかない・人前でバカにする・人格を否定する暴言を吐く・大切なものを壊す・殴るそぶりなどです。
「精神的暴力」には、「社会的隔離」を含みます。
「社会的隔離」とは、仕事をさせない・友達と交流させない・電話やメールをチェック・携帯電話やパソコンを持たせない・外出させない・交友関係を細かく管理するなど、妻が社会と交流するのを許さないことを言います。
③性的暴力
性交渉を強要する・中絶を強要する・避妊に協力しない・見たくないAVを見せるなどです。
④経済的暴力
生活費を渡さない・買物の決定をさせない・酒やギャンブルに生活費をつぎ込むなどです。
DV夫は、「①身体的暴力」によってけがを負わせるなど、主に妻の体力を奪います。
妻は、夫に反論をしたり、ぶすっとした表情をするだけで殴られるので、だんだん自分の意志を表すことができなくなっていきます。
顔などにけがが目立ったりすると、人前に出ることもつらくなるので、「社会的隔離」の効果もあります。
「②精神的暴力」によって妻の自尊心を破壊し、劣等感を育てます。
毎日何回もバカにしたり、脅したりすることで、妻の自己肯定感を破壊します。
妻を束縛して、社会から切り離すことでますます夫に頼らせ、情報を外部から入らせないようにします。
外の人は敵であり、夫以外は全員、自分の意見など誰も聞いてくれないと思い込ませます。
夫の話だけを聞いているうちに、夫の理不尽な話が妻の心にしみ込んでいきます。
気が付くと妻は、夫の作った小さな世界で、非常識な考え方しかできなくってしまいます。
また、「③性的暴力」によって、妻は気力を奪われます。
最もプライベートな部分なので、人に話しずらく、誰かに相談するのを妨げます。
そして、「④経済的暴力」によって妻は逃げるという選択を奪われます。
夫がいないと生活できないようにしながら、貧困の中で生活することを強いるのです。
4つの暴力を、複合的に使う
DVは、「身体的暴力」だけでなく、「精神的」「性的」「経済的」暴力が複雑に重なりあって、長期で、反復されることが特徴です。
加害者は、この4つの暴力を複雑に使って、被害者に逃げられないよう、上手にコントロールしていきます。
例えば、「精神的」暴力には、「経済的」暴力がつきものです。
夫婦生活は、「時間」をどう使うか、「お金」をどう使うかの2つの大きな決定が基盤になりますが、
「お金」を渡さない、作らせないことによって、妻の発言権を奪います。
DV夫は、何かと言いぐさを作り、妻を働かせない、お金を渡さないことが多いです。
発言権を奪い、そして、「精神的」暴力で何でも妻のせいにしたり、妻をバカにして、何の決定権も与えません。
DV夫の常とう句の「誰のおかげで飯が食えると思っているんだ!」は、この2つの暴力が前提になっています。
また、「身体的」暴力がある場合は、絶対に「精神的」暴力がひっつきます。
誰も妻を見つめて、「君は素晴らしい!」と言いながら殴ったりはしません。
かならず、妻をバカにする言葉を口にしながら、「身体的」暴力をふるいます。
たまには「君が好きだからだ!」と言いながら殴る夫もいますが、それは、お説教の気持ちで暴力をふるうときです。
「妻が言われてもできないから暴力をふるう。」
「こんなに愛しているのに、わかってくれないから暴力をふるう。」
という言い訳なのですが、夫の要求は、不可能なことだったり、非常識なことだったりする場合がほとんどです。
できないのがわかっているのに、不可能なことを言いつけておいて、
「できないお前が悪い。」と言って、妻に暴力をふるうんです。
理不尽なこと、この上ないです。
これに「性的」暴力が入ると、本当に気力を奪われます。
妻の心に屈辱感、罪悪感、背徳感など、
マイナスな感情が入りすぎて、「思考停止」してしまいます。
でもDV夫の狙いは、そこにあります。
4つの暴力を使い分けて、外の世界と遮断させ、自分に有利な情報だけを妻にしみ込ませていきます。
バカにして、お金も与えず、外の世界では生きていけないと思い込ませ、自分の中に囲い込みます。
妻を思考停止の状態にさせ、何でも言うとおりにさせます。
DV夫は、自分の言うことだけを従順に聞き、自分のことをずっと愛し、自分のために何でもしてくれる、「自分だけの奴隷」を作ろうとしているのです。
次は、虐待のサイクルに続きます。
またまた、長文を読んでくださって、ありがとうございました。